黒褐色の透明感に気づいた日――泥染め大島の魅力再発見

リサイクル着物の楽しみ

ある日ふと、自分の大島紬の色を見直してみたくなりました。
茶泥だと思い込んでいたその布は、 光の中で驚くほど澄んだ黒褐色を見せてくれました。
泥からこんな透明感が生まれるなんて── そんな小さな驚きを綴ってみました。

茶泥だと思い込んでいた私の大島紬

ある日、人気ブロガーさんが紹介していた「泥染め&紫芋染め」の大島紬を見て、私は思わず目を奪われました。
画面に映るその着物は、深い茶色と紫が溶け合うような、奥行きのある色をしていたのです。
その瞬間、胸の奥がざわっとしました。
――あれ?
私の大島って、こんなに深い茶色だったでしょうか。
私はたびたび「茶泥の大島紬です」と気軽に書いてきましたが、
あらためて思い返すと、私の着物はむしろ黒に近い墨色です。
あのブロガーさんのような深い茶褐色とは、どう見ても違います。
そこから「茶泥とは何か?」という小さな探究が始まりました。

泥染めの仕組みを知る――技法を整理してみる

茶泥を理解するために、まず泥染めの工程を調べてみました。
奄美大島の泥染めは

  • テーチ木(車輪梅)の煎液で糸を染める
  • 鉄分を含む泥田で媒染する
  • これを何度も繰り返す

という独特の方法で行われます。

この反応によって、糸は
赤茶→茶褐色→黒褐色→黒
へと少しずつ深まっていきます。

その染めの工程で茶色が強く残ったものを「茶泥」と呼ぶことがありますが、黒が前にでたものを便宜上「黒泥」と呼ぶこともあるようなのです。



ただし、それはどちらも技法の名前ではなく
あくまで色の傾向を示す言葉です。

ここで私は、ひとつ大きな誤解をしていたことに気づきました。

私はずっと
「大島紬=泥染め」
「泥染め=茶泥」
と短絡的に思い込んでいたのです。

でも実際には

  • 大島紬は“織り方”の名前である
  • 泥染めは“糸の染め方”
  • 泥田に入るのは泥染めする糸だけ

という構造になっています。

“糸の染めの技法”と“織の技法”を混同していたからこそ
自分の着物の色を正しく見ることができなかったのだと思います。

色をきちんと観察することなく
安易に“茶泥”と表現してしまったということです。


証紙と実物を見直す

技法の整理をしたうえで
あらためて自分の着物を自然光の下でひろげてみました。

証紙には「純泥染」「古代染色」「奄美大島」とあります。

これは本場大島紬であり泥染めの糸で織っていることを示していますが
茶泥か黒泥かまではわかりません。

次に色味を観察すると、第一印象は“黒に近い墨色”でした。
光の角度でわずかに温かみはでるものの
茶泥特有の深く艶のある茶色とは言えません。

「茶色×紫」ブロガーさんのお着物の茶色とはあきらかに違います。

「これは黒泥寄りなのでは?」
そんな仮説が浮かんできました。

端切れの耳の部分が一番黒の色合いがわかるみたい

そして気づいたこと――私にこの着物が似合う理由

私は茶色があまり似合いません。
顔色が沈んでしまうことが多いからです。

でも、この大島紬はしっくりきます。
自分でいうのもなんですが非常に似合うのです。

それはきっと、茶色より黒が強い色だから。
むしろ“黒”と言っていいほどの落ち着いた墨色だからこそ
私の肌に馴染んでくれるのだと思います。

観察を続けているうちに、もうひとつ大きな気づきがありました。

私はもともと、透明感のあるクリアな色が似合うタイプです。

そして、「泥=濁りのある色」という先入観があったので
泥大島は必然的に似合わないだろうなと思い込んでいたのです。

でも、あらためて自分の着物の色をよく見てみると
地色の黒褐色は驚くほど澄んでいて、濁りを感じさせません。


光のなかで透明感さえたたえ、しかもこっくりと深い、非常にクリアな色でした。

“透明感のある泥”などという矛盾した言葉がふっと浮かびました。

自然の風景のなかでは出会えない透明感のあるきれいな泥が
大島紬の色の世界には確かに存在する。

泥からこんなに美しい色が生まれることに、静かな感動が湧き上がってきました。

そして、この澄んだ黒褐色だからこそ
白っぽい濁りが入ってくると途端に似合わなくなる私にも
自然に馴染むのだと感じています。

結論――色の幅を知ることで見えてきた“本当の姿”

今回の検証で一番大きかったのは
泥染めの色味は「茶泥か黒泥か」という単純な二択ではなく
そのあいだに豊かな段階があるという理解でした。

同じ泥染めでも
テーチ木染めの回数や濃度、泥田に浸ける回数や時間
泥の鉄分量や泥の状態
天候や湿度、糸の性質などによって
茶色が強く出るものもあれば、黒が前に出るものもある。

そして同じ色を染めようと思っても、まったく同じ色には染められない
非常に繊細で豊かな作業でもあるのです。

その“色の幅”の中で、私の着物は黒寄りの位置にあるようです。

その黒のニュアンスこそが
茶色が苦手な私にもすっと馴染む理由でもありました。

それからテーチ木のタンニンと泥田の鉄分との化学反応から生まれる透明感も。

技法と色の関係を整理し
自分の着物を自分の目で観察してみることで
ようやくこの一枚の“本当の姿”が見えてきた気がします。

どうやら大島紬は分類で類型化することで説明できるような
そんな単純な織物ではないようです。

色味や質感の違いを、自分の感覚で確かめる楽しさのある世界。
今回の気づきは、その入り口に立てたような、そんな手ごたえのあるものでした。

おまけ

すぐ上の画像のコーディネートが手持ちの帯と小物のなかで一番好きだから
この着物に初めて袖を通すときはこれにするつもり。

でも ↓こちら↓ のコーデもスッキリしていて結構いいと思う。

この細い帯締めは帯専門おびやさんの商品。
細さが魅力で長尺なのも使いやすいポイントです。

私が持っているこの色は“基本の白”というシリーズのなかの赤み灰白だったと思いますが
今は同じものは売り切れで販売されていないようです。

これに一番近い色はシルバーですが、こちらも現在売り切れ。でも再入荷通知を登録すれば入荷したときに知らせてもらえるようです。シルバーは白よりもむしろ合わせやすいかもしれませんね。長さはM、Lと選べます。シルバーなら西陣のしっかりした帯地にもなじむし、この細さだからカジュアルにも対応できます。


↓同じおびやさんの帯留め。梅をかたどっていて、今の季節にぴったりですね。本真珠だそうですのでお値段もいいですが、こんな帯留めがあったら新年を迎えるのが毎年楽しみでたまらないことでしょう。


↓こちらは商品ページに“黒大島”と表記のある奄美産の大島紬。黒の見事さが画像からも伝わりますね。


↓こちらは竜郷柄。大胆な柄と緻密な絣に目を奪われる1枚。本場奄美大島紬グランプリ受賞作というのも納得の美しさ。


ヤフオクで出会った泥大島紬|八掛替えで一生ものに | 藤香のきもの手控え帖

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