書評『あなたの人生、片づけます』垣谷美雨著|捨てる?着物をですか?

おすすめ本の紹介

着物好きとしては胸がざわつく一冊を読みました。
垣谷美雨さんの『あなたの人生、片づけます』。
片づけ屋・大庭十萬里が、片づけられない人の心の奥にある問題を見つめていく物語です。

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あなたの人生、片づけます [ 垣谷美雨 ]
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本書には4つのケースが登場しますが、
私が強く心を揺さぶられたのは「ケース4・きれいすぎる部屋」。

和ダンスいっぱいの“着物”が語りかけるもの

十萬里のもとに片付けの依頼が舞い込む。
片づけできない人は高級官僚の奥様。

家を訪問し和ダンスを開けると、躾糸がついたままの着物がぎっしり。

十萬里が着物が好きなのか尋ねると
「母が勝手に作っただけで、趣味も合わないし着る機会もない」と淡々と答えます。

着物好きとしては、なんとも言えない気持ちになる場面。

あるなら着ようよ。
羨ましい、私にちょうだいよ。

そう叫びたくなってしまいました。

そして片づけ屋・十萬里はこう判断します。
「全部、捨てましょう」

奥様の反応。
「捨てる?着物を、ですか?」

まあ、そう言いますよね。
痛いほど分かるわ。

着物を捨てるなんて、日本人のDNAが拒否するのです。


着物の“現実”は、美しさだけでは語れない

十萬里が捨てるよう勧めた理由は、どれも現実的です。

  • すべてクリーニングに出すと高額
  • その後も陰干しや防虫剤など手間がかかる
  • 古着屋に出しても数百円
  • クリーニング代にもならない

胸は痛むけれど、これが事実。

私自身、最近着物を断捨離したばかりです。
ゴミに出すという残酷な選択をしました。

これには致し方ない理由があって。
ポリープが見つかり検査になったのです。

結果が出るまでの間に、着物を持ち過ぎていることや、人目に触れたらちょっと恥ずかしいような、みすぼらしい着物がやたら気になって。

いずれ洋服にしようとか思っていたのだけど。
この時ばかりは、不確かな先のことを考えるのはよそうとおもって、それで捨ててしまったのです。

考えて決めたことなので後悔はないけれど、後ろめたさは残りました。
絹ですものね。

でも、この小説を読んで少し気持ちが軽くなりました。

着物に執着のない人から見れば、持っているだけで労力とお金がかかる。
時と場合によっては“捨てる”という選択肢が正しいときもある。

あの時はあれが正解だった。
今はそう思っています。

母の作ってくれた着物は、簡単には手放せない

奥様は「母が生きているうちは捨てられない」と言います。
これもよく分かる。

私も、母が作ってくれた赤の鮫小紋をほどいたとき、リメイクしようかと考えたけれど、母が元気なうちは切り刻むようなことはできないと思いました。

着物は布でありながら、“誰かの気持ち”が込められているものだから。

着物は“片づけられない心”を映す小さな断片

このケースで着物は、物語の中心ではありません。

着物そのものがテーマではなく、「捨てられないものの代表格」として一瞬登場するだけ。

本筋は、“なぜこの奥様が片づけられなくなったのか”という心の問題にあります。

実はこの奥様、家の中のほとんどを片づけられないのに、とある部屋だけは完璧に整えている。
その“整いすぎた部屋”に、彼女の心が止まってしまった理由が隠されているのです。

だから、着物のエピソードは本筋ではないけれど、「片づけられないのには、必ず理由がある」
というテーマを象徴する小さな断片として、とても印象的でした。

まとめ:着物好きにも、片づけに悩む人にも刺さる一冊

着物のくだりは物語の中で、“捨てられないものの象徴”として一瞬登場するだけです。

あるいはまた、“整理保管ができないゆえにゴミとなってしまったものの象徴”として。

けれど、物を持つことの重さや、手放すときのためらいが描かれていて、着物好きとしても思わず考えさせられる場面でした。

この本の魅力は、片づけられない理由を丁寧に掘り下げていくところ。

心の整理と物の整理はつながっている——

そんな気づきを与えてくれる、読み応えのある一冊です。

🍀着物の話はまったく出てきませんが、物語としての面白さはこちらも負けていません。
この本は『あなたの人生、片づけます』の“姉妹本”で、ダイエット指南役は大庭小萬里。
『あなたの人生、片づけます』の主人公の十萬里とは姉妹という設定で、その関係性も読んでいて楽しいポイントです。テーマは“ゼイ肉”(笑) 

ガラクタを片づける。ゼイ肉を落とす。一見まったく違うものが、実はどちらも「心の問題」とつながっているという点で、ユーモラスでもあり、深く鋭くもありますね。


🍀着物を手放すか迷うとき、まずは一度“整える”という選択肢もあります。大切なものほど、きちんと扱うことで気持ちが決まることもあります。


🍀季節の変わり目には、着物の出し入れが多くなりますね。着物キーパーは、湿気や虫、紫外線から守ってくれる保管アイテムです。私はまだ持っていないのですが、口コミを見ていると「たとう紙のまま入れられる」「湿気対策がしやすい」などのメリットがあり、なかなか心強いアイテムのようです。


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