着物好きとしては胸がざわつく一冊を読みました。
垣谷美雨さんの『あなたの人生、片づけます』
片づけ屋・大庭十萬里が、片づけられない人の心の奥にある問題を見つめていく物語です。
本書には4つのケースが登場しますが、
私が強く心を揺さぶられたのは「ケース4・きれいすぎる部屋」

書 名 あなたの人生、片づけます
出版社 双葉社
発行日 2016/11/13
和箪笥いっぱいの“着物”が語りかけるもの
十萬里のもとに片付けの依頼が舞い込む。
片づけができない人は高級官僚の奥様。
家を訪問し和箪笥を開けると、躾糸がついたままの着物がぎっしり。
十萬里が着物が好きなのか尋ねると、「母が勝手に作っただけで、趣味も合わないし着る機会もない」と淡々と答えます。
着物好きとしては、なんとも言えない気持ちになる場面。
あるなら着ましょうよ。
羨ましい!
私にください。
思わず、そう叫びたくなってしまいました…
片づけ屋・十萬里はこう提案します。
「全部、捨てましょう」
奥様の反応。
「捨てる?着物を、ですか?」
まあ、そう言いますよね。
分かるわ。
痛いほどに。
着物を捨てるなんて、日本人のDNAが拒否するのです。
絹ものだから余計にね。
着物の“現実”は、美しさだけでは語れない
十萬里が捨てるよう勧めた理由は、どれも現実的です。
- すべてクリーニングに出すと高額
- その後も陰干しや防虫剤など手間がかかる
- 古着屋に出しても数百円
- 買取に出したところでクリーニング代にもならない
胸は痛むけれど、これが事実。
私自身、最近着物を断捨離したばかりです。
しかも、ゴミに出すという残酷な選択をしました。
これには致し方ない理由があって。
ポリープが見つかり精密検査になったのです。
検査結果が出るまでの間は、精神的につらい時間でした。
ネガティブなことばかり考えてしまって。
いますぐ入院ということになったら、この着物たちはどうなるんだろうって。
着物を持ち過ぎていることや、人目に触れたらちょっと恥ずかしいような、みすぼらしい着物もあるので、誰にも見られたくないとか思ってしまって。
いずれ洋服にリメイクしようと思っていたのだけれど。
健康で元気ならそういうことに時間も手間もかけられるけど、もし重い病気だったら?
そう思うといたたまれなくなって。
不確かな未来をあてにするのはよそう、今できるのはさっと処分することではないか?
それで捨ててしまったのです。
考えて決めたことなので今も後悔はないけれど、後ろめたさは正直なところ残っています。
絹を捨てるってすごく気の重いことなのです。
ですがこの小説を読んで、この時の選択は正しかったのではないかと気持ちが軽くなりました。
持ち続けていたところで、好きでもない針仕事をするのはいつになることやら想像がつかないし。
持っていることで労力もスペースも必要。
まして、捨てたものはすべてリサイクルで安価に購入して、何度か着用したものばかり。
十分に楽しんだと言える着物ばかりでした。
時と場合によっては“捨てる”という選択肢が正しいときもある。
あの時はあれが正解だった。
今はそう思っています。
母の作ってくれた着物は、簡単には手放せない
この高級官僚夫人はお手入れせずにカビがはえてしまった着物について、「母が生きているうちは捨てられない」と言います。
この気持ちもよく分かりますよね。
私も、母が作ってくれた赤の鮫小紋をほどいたとき、リメイクしようかと考えたけれど、母が元気なうちは切り刻むようなことはできないと思いましたもの。
着物は布でありながら、“誰かの気持ち”が込められているものだから。
大切な娘のために誂えた着物だということは、この奥様も感じていて、それを思うから捨てられないのでしょう。
着物は“片づけられない心”を映す小さな断片
このケースで着物は、物語の中心ではありません。
着物そのものがテーマではなく、「捨てられないものの代表格」として一瞬登場するだけ。
本筋は、“なぜこの奥様が片づけられなくなったのか”という心の問題にあるのです。
実はこの奥様、家の中のほとんどを片づけられないのに、とある部屋だけは完璧に整えている。
その“整いすぎた部屋”に、彼女の心が止まってしまった理由が隠されているのです。
だから、着物のエピソードは本筋ではないけれど、「片づけられないのには、必ず理由がある」
というテーマを象徴する小さな断片として、着物が登場している。
そのことがとても印象的でした。
まとめ:着物好きにも、片づけに悩む人にも刺さる一冊
着物のくだりは物語の中で、“捨てられないものの象徴”として一瞬登場するだけです。
あるいはまた、“整理保管ができないゆえにゴミとなってしまったものの象徴”として。
けれど、物を持つことの重さや、手放すときのためらいが描かれていて、着物好きとしても思わず考えさせられる場面でした。
この本の魅力は、片づけられない理由を丁寧に掘り下げていくところ。
心の整理と物の整理はつながっている——
そんな気づきを与えてくれる、読み応えのある一冊です。
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🍀着物の話はまったく出てきませんが、物語としての面白さはこちらも負けていません。
『あなたの人生、片づけます』の“姉妹本”で、ダイエット指南役は大庭小萬里。
小萬里は十萬里とは姉妹という設定で、その関係性も読んでいて楽しいポイントです。
テーマは“ゼイ肉”(笑)
ガラクタを片づける。
ゼイ肉を落とす。
一見まったく違うものが、実はどちらも「心の問題」とつながっているという点で、ユーモラスでもあり、深く鋭くもあるのです。
🍀着物を手放すか迷うとき、まずは一度“整える”という選択肢もあります。
大切なものほど、きちんと扱うことで気持ちが決まることもあります。
🍀季節の変わり目には、着物の出し入れが多くなります。
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