辛いことがあると着物を作りたくなります。
その理由は、楽しいことを考えれば一時的につらさから逃れられるからかなと、単純に思っていました。
でも先日、総絞りの着物のことを書いていたとき、「もっと深い理由があるのでは」と感じる瞬間がありました。
その後、黒羽織の記事を書いているときにも、同じ“気づき”がやってきました。
どうやら私の心には、着物と通じて“未来への希望”という灯りがいつも小さく点っているようなのです。
辛いときに着物を作りたくなる理由
「どうして私は辛いことがあると着物を作りたくなるんだろう」と、ずっと思っていました。
この傾向はだいぶ前からで、出産してから特に強くなったと思います。
子どもの夜泣きがひどい。
眠れない。
北海道の雪深い田舎町で乳幼児を相手に疲弊する日々。
小児科もろくにないし、親戚も友人もいない。
なかなか言葉の出ない息子が心配で、気が変になりそうな毎日のなかで、唯一の慰めは着物でした。
大切に保管している反物を広げたり、たとう紙を開いて、初めて自分のお給料で作った着物を触ったり。
息子の入院に付き添って、病院の白い天井を眺めつつ、乳幼児用の小さなベッドに背中を丸めて添い寝しながら、「これを乗り越えたら、あの反物を仕立てよう」と何度思ったことか。(ちなみに息子は風邪をこじらせたり、胃腸炎にかかったりで、都合5回も入院しました)
その辛さを乗り越えたときに実際に作ったこともあるし、終われば忘れてしまってそのままになったこともあります。
苦しい日々にドンと買い物をしてしまうこともあって。
特にこの総絞りを買ったときは、本当に思い切ったことをしたものだと今でも思います。
あの頃の私は未来が見えなくて、毎日がただ重かったのです。
未来が不安で不安で。

それなのに、こんな値の張る着物を思い切って買ったのでした。
その理由が自分でもうまく説明できずにいました。
「買い物でストレスを発散しているだけ」と思っていたけれど……
ならば洋服でも食べ物でも良いはず。
なぜ “きもの” なのか?
未来に“光”がほしかったんだと気づいた
先日、黒羽織の記事を書いていて、その答えのようなものを見つけた気がしました。
子どもが生まれたときから、私にはずっと憧れの装いがあって。
それは「子どもの学校行事に黒い羽織を着て付き添いたい」というものでした。
多分、母がそうしていたからというのもあるし、着物雑誌で見た御召に黒羽織といういでたちを見たことあって、それがあまりに素敵で、「いつか自分も」と思ったのだと思います。
黒羽織の記事:羽裏が破れて気づいたこと。張り替えと羽裏に向く生地の話
この憧れの装いに関しては、母が父とのお見合いで着た羽織を譲り受けて黒に染め替え、息子の入学式と卒業式に着ましたので、望みは叶えたのですが。

その記事を書いていて、「いつか黒羽織を着て学校行事に行きたい」という思いが、灯台のあかりのようなものだったと、自然に言葉になって出たのですよね。
書きながら、ああ、そういうことかと思いました。
私は、未来に希望が欲しかったのだと思います。
着物って、買った瞬間に終わりじゃなくて、“いつか袖を通す自分” まで含めて手に入れるもの。
そして洋服よりも長く身に着けることができる。
形に流行がないから。
つらい時期に着物を買うのは、“未来の自分を信じるための行為” だったのではないかしら。
「この苦しさを抜けたら、この着物を着て出かけよう」
「いつか、この総絞りで楽しく過ごす日が来る」
そう思えるだけで、暗闇の中に灯(ひ)がともる。
総絞りを買ったとき。
あの時の私は、「まだ未来を諦めなくていいよ」と自分に言いたかったのかもしれません。
その未来を手に入れるには?
でも実際には生活の忙しさに埋もれて、着物はタンスのなかで静かに眠るばかり。
買ったことに満足してしまい、そのうち着ようと思いながら、時間だけがいたずらに過ぎていってしまいます。
きものを着る未来が欲しかったのに、本気で計画したことがあったかしら?
暗い日々に無意識のうちに手にしようとした未来への期待を、そろそろ実現してもいいのではないか?
総絞りを着て出かけてみようか……。
でもどこで、どんな場面で着る?
どんな選択肢がある?
いろいろ考えてみたけれど、
そんな大げさなことでもないのかもしれない。
例えば総絞りを着るなら、ちょっといいところがいいよね?
それなら、息子と一緒に地元の老舗ホテルのラウンジでケーキを食べるのでもいいのではないかしら?
いやいや、彼はスイーツ男子で甘いものは大好きだけど、食べたらさっさと帰りたい人。
それでは私は納得できないから、いっそ一人でケーキセットでもいただきつつ、読書でもしたらどうかしら?
機会を待っていても、向こうからやってきてはくれないみたいだから、自分のほうからチャンスをつかみにいくしかない。
人生で一度くらい、夫と結婚式をあげたホテルでひとりきり、いい着物を着てお茶を飲んだって、バチはあたらないでしょう。
試してみたら、一度で済まなくなるかもしれないのが心配だけれど。
着物を愛おしむということ
せっかく買ったきものたち。
着ていく場面を、これからたくさん作りたい。
あの時の私に語りかけるように思う。
楽しいことは、あなたの人生にまだたくさんあるよ。
そのきものを着て出かけようよ。
辛いさなかに高価な着物を買った自分を、どこかでずっと責めていた気がします。
けれど──
それが浪費でも逃避でもなく、未来を信じるための、ぎりぎりの自己救済だったのなら――
だからこそ。
あの総絞りをちゃんと着て、過去の自分に応えてやりたい。
ゆっくりでいいから、この着物に“想い出”という新しい生命を吹き込み、大切な宝物として育てていきたい。
着物を大切にするって、愛おしむって、きっとそういうことなのではないかしら。
今日の着物まわりメモ
🍀函館国際ホテルのティーラウンジ(ル・アーブル)でお茶をしたい。
ここで結婚式をあげたので、私にとって思い出のホテル、特別なホテルです。

🍀京都金襴のブックカバー
まだ持ってはいないけれど、こんなブックカバーがあれば着物の日の読書にぴったりだと思う。
和の質感がある小物は、心が落ち着く。

🍀着物を大切にしていくために、お手入れのことも少しずつ整えていきたいと思っています。
なんとなく薄汚れてきたなと思ったら、専門のクリーニングを頼むことが多いです。
🍀着物を長く気持ちよく着るために、たとう紙は時々替えるようにしています。
薄紙なしのタイプは扱いやすく、収納もすっきりします。
必要な方のために、リンクを置いておきますね。
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