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先日、「カビだらけの着物が届いたけれど、なぜか似合ってしまって、結局クリーニングに出して着続けている」という話を書きました。
▶こちらの記事 いくら安くても、白いカビびっしりの着物を平気で送ってくる店ではもう買わない
この記事を書いているときは、当時の怒りを思い出しながら、思うことを正直に言葉にしていっただけだったですが。
公開してそれを確認のために読んでいるうちに、湧いてくる思いがあって。
実はこの着物から学んだことは、ものすごく大きかったのではないかと気づいたのです。
ただ単に似合うというだけじゃない、それ以上のものを私に与えてくれていたのです。
今日はそのことを少し整理してみたいと思います。
この着物が教えてくれた3つのこと
この小紋が届いたときに思ったのは、「ひどいカビ。でも似合う」ということ。
この二つだけでした。
鏡の前で羽織った瞬間に、「あ、これは私に似合う」という喜びがすごく強かった。
だからカビだらけにも関わらず、お手入れして着ることにしたのです。
黙って売りつけたショップに対する怒りはありましたが、手放しませんでした。
「なんて酔狂なんだ」と自分にツッコミをいれつつ、客観的にみればちょっとどうかしているとわかっているのに、着たい気持ちが抑えられない。
届いて羽織った瞬間に、“これは私のための着物だ”って思ってしまったんですね(笑)
そうして、着たい一心でクリーニングに出し、戻ってきて何度か着用するうちに、いろいろな学びがジワジワとやってくることになったのです。

似合う着物の色柄がわかったこと
一つ目は似合う色柄。
私にはどうやら
1.深く濃い色
2.シボのしっかりした縮緬
3.柔らかな曲線を持つ文様
4.総柄
こうしたものに惹かれるだけではなく、非常によく似合うらしいのです。
それが実感をもってよくわかりました。
なんとなく好きで選んだ着物でしたが、羽織ってみるまではこれほどハマるとは思っていなくて。
やっぱり実物を着てみるという体験は、何よりも強いのですよね。
着てみて、動いてみて、いろいろ合わせてみて初めて分かることがある。
すっぺりとした江戸小紋みたいな着物よりも、ぼってりと厚い縮緬が私には似合うんだという実感はいまも商品を選ぶときの指標となっているのです。

暖かさも着て初めて分かった
もうひとつ意外だったのは暖かさでした。
鬼縮緬のようなシボのしっかりした着物は、真冬に着ても非常に暖かいのです。
お正月に家で着て過ごして、夜になって、ちょっと暇だね、出かけようか、となって。
真冬の夜に車で蔦屋書店に向かったのですが、暖かさに本当に驚きました。
真冬の北海道ですから、たぶんその時の気温は、マイナス5度からマイナス10度の間だったろうと思います。
それでも、この着物は暖かいなって感心したのです。
たぶん空気をたくさん含んでいるからでしょうね。
真綿紬やウールが暖かいなら別に驚きもしないのですが、縮緬が暖かいのは本当に発見!って感じ。
ですから、この着物は真冬に着ます。
むしろ袷の季節に入ってすぐの10月には避けるくらい。
雑誌を読んでも、カタログを眺めても、この肌感覚までは分かりません。
実際に着て、歩いて、寒い日を過ごしてみて初めて知れたことでした。
カビが出たときの対処法
もう一つわかったことは前回の記事と重複しますが、カビがびっしりでも現代の技術なら、プロに頼めば着られる程度のものにはなるということ。
そしてそれにかかる費用がどれくらいかも。
わからないということが一番の不安の原因なので、知っているってとても強いのです。
カビがびっしりでもこれくらいのお金をかければ、この程度にはなる、とわかっていると、次にリサイクル着物を欲しいと思ったときに参考になります。
逆に、「そういう着物にはどんなに気に入っても手出ししない」と割り切ることも可能になります。
着物沼にハマってしまった私にはこの効能はなかなか強く、以来、購入にはかなり慎重になりました(笑)
▶【関連記事】私が楽天市場のシンエイさんばかり紹介してしまう理由
この着物から学んだことはまだあります。
それは一枚の着物の話を超えて、リサイクル着物そのものの面白さに気づいたことです。
シミや臭い、カビのような失敗もあるのですが、その一方で新品ではなかなか得られない発見もあります。
そう考えるようになったきっかけも、実はこの小紋でした。
リサイクル着物は寸法を試すこともできる
カビだらけの小紋から学んだこと3つを挙げてきましたが、ここからはリサイクル着物から学ぶことという、すこし大きな括りでみたいと思います。
着物好きの方なら、「寸法があと1センチ足りない」とか「裄が少し小さい」とか、そんな理由で購入を見送った経験があるかもしれません。
もちろん寸法は大事です。
ですが私は最近、その数字って本当に自分にとって絶対の正解なのだろうか、と思うことがよくあります。
メルカリなどを見ていると、コメント欄で裄や身丈を詳しく問い合わせて、少し小さいので諦めますとか、裄はあと何センチ出せそうですか?というのがすごく多いのです。
お気持ちはすごくよくわかるのです。
寸法を確認せずに買うと、極端な場合は全く着られないとか、お直しに大枚はたくことになりかねませんから、慎重になるのが正しいのです。
その一方でこうも思います。
リサイクルだからこそ、少し違う寸法を気軽に試せるのではないかしら、と。
呉服屋さんで新調するときにもらう寸法は、もちろんそれはそれで正しいのですが、絶対のように信じ込んでいいかというと、私の経験上ではそうとも言いきれないのです。
なぜなら、初めて着物を作るときには、大きく作られることが多いからです。
私の場合もそうでした。
これには合理的な理由があって、あとで太ることもあるし、子孫に譲るときには大きい方が都合がいいのです。
世代が変わるとたいてい体格は大きくなりますものね。
でも和服の寸法が柔軟なのは、その形状や着付け方法を考えれば容易に誰でも想像はつくはず。
がちがちに絶対視するよりも、ちょっと小さ目の着物をきてみたらどうなるんだろうという冒険心を持つことも、のちのち役に立つと思います。
裄は67cm必要だと思っていたけど、65cmを試してみたら案外動きやすくて気に入った、ということも起こりえます。
というか、私がそうだったのです。
リサイクル着物には失敗もあります。
シミがあったり、 臭いがあったり。
今回のように、ひどいカビに遭遇することもあります。
でも、その代わりに、
「この寸法の方が意外と動きやすい」
「裄はもう少し小さい方がすっきり見える」
「これから太るかもしれないけど、今の私なら身幅はこれで十分」
という発見もあるのです。
そしてその発見は、何十万円もかけて誂えた着物より、数千円のリサイクル着物だから起こるということがあるのです。
呉服屋で買った高い着物と帯は、それだけでもう特別な存在になります。
だから、自分にもっとも似合うタイプの着物ではなくとも、何とかして着ようとして、実際なんとかなってしまう。
それはそれでもちろん素晴らしいのですが、もっと違うタイプの着物が似合うかもしれない可能性を、ほんの少し削るところがあるかもしれない。
リサイクルなら、プチプラなら、チャレンジできる。
そこで得る成功も失敗も、次に必ず生きてくるのではないかと思います。
私にとって特別な一枚
だから今では思います。
あの着物が教えてくれたのは、「この程度のカビは、このくらいのお値段のクリーニングでなんとかなる」ということだけではありませんでした。
自分に本当によく似合うもの。
心底好きなもの。
冬に頼りたくなる一枚。
カビが出てしまったらどう対処すればいいのか。
暮らしのなかでどう着物という衣類と付き合えばいいのかという、より本質的なことに気づかせてくれたのです。
カビだらけの小紋は、届いた時は非常に腹の立ったお買い物でした。
それでも今は、大切な着物の一枚です。
着るたびに、「あの店は許せない」と思いながら、同時に「でも、この着物に出会えてよかった」
とも思うのです。
この着物に出会わなかったら、本当に似合う着物を知らないまま、たいして似合わないものを買い込み続けたかもしれません。

リサイクル着物は失敗も多い。
でも、その代わりに得られるものもある。
数千円で「自分に似合うもの」や寸法を試すことができる。
カビまみれの困ったいでたちで現れた先生ではありましたが、多くの学べる要素を引っ提げて乗り込んできた、印象深い存在。
だから、嫌いになるどころか今もすごく愛おしくて、大切に着用しています。
今日の着物まわり
リサイクル着物は失敗もありますが、その一方で思いがけない発見もあります。
私自身はこの経験以来、状態説明の丁寧なお店を選ぶようになりました。
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