帯揚げという小物は、なかなか不思議な存在です。
着付けをきちんと習うまでは、それが何なのかさえ分かっていませんでした。
今の私は、帯枕を固定し着姿の印象を左右する大切な役割があると知っています。
けれど、知識があっても上手に使いこなせるかどうかは、また別の問題で……
お買い得だからと買って、一度も使わないまま眠っている帯揚げがあります。
その反対に、帯に合わせて購入したはずなのに、帯だけ手放してしまい、気づけば帯揚げだけが箪笥の片隅で静かに眠っている──
そんなこともあります。
宙に浮いていた帯揚げとの再会
実は私には、“宙に浮いている帯揚げ”がありました。
深い緑色の、夏の帯揚げです。
▶こちらの深緑の帯揚げです。
ヤフオクで衝動買いした帯を夏大島に合わせたくて、おびやさんに相談した際に提案していただいたものでした。
私の場合、緑は洋服ではまず選ばない色です。
帯がグリーン系だったのでアドバイスには納得し、思い切って迎えたのですが──
どうしてもヤフオクの帯そのものが好きになれませんでした。
置きコーデを何度も試したものの心が動かず、結局その帯はメルカリへ。
残ったのは、相棒を失った深緑の帯揚げ。
単体で見ると、「やっぱり私の色じゃない」という思いばかりが募り、 そのまま箪笥にしまい込んで、存在すら忘れかけていました。
単衣の塩沢にあわせる
最近、夏物の支度をしていたときのことです。
塩沢の単衣を広げた瞬間、ふっと思い付きが降りてきました。
──この着物なら、深緑の帯揚げが合うのではないかしら。
この帯揚げは上下で織りの密度が異なり、透け感の少ない方を見せれば単衣にも使える優れものです。
まずは塩瀬の白帯と合わせてみました。
すっきりとした白が塩沢の透明感を引き立ててくれますが、やや帯の白さが際立って浮いて見え、深緑の帯揚げは控えめな印象になります。

帯締めは、おびやさんの“灰白青み”の細い帯締めを合わせています。
今は品切れのようですが、微妙にグレーがかったニュアンスからでとても気に入っています。
白帯の格を損なわず、深緑の帯揚げとも自然に馴染んでいますね。
次に、博多帯をコーディネートしてみました。
帯の柄に深緑が入っていますし、白地なので六月の単衣に合わせれば爽やかに見えるはずです。

博多帯には、塩瀬帯と同じく、おびやさんの“灰白青み”の細い帯締めを合わせています。
白地の帯の透明感を損なわず、深緑の帯揚げとも静かに馴染むコーデです。
このコーデでは、帯留めはあえて使わず、博多帯の柄と深緑の帯揚げの調和を楽しんでいますが、実はこういう“透明感のある帯留め”を合わせても素敵だなと思っていて……
最近気になっているのが、こちらのガラス帯留めです。
どちらのコーデも、白と灰の透明感をもつ塩沢に、深緑の影色がよく馴染んでいます。
塩沢特有の陰影のある光の中で、帯揚げが“静謐な深み”を帯びて緑豊かな季節を思わせる佇まいです。
眠らせたまま無駄にならなくて良かったと、心から思いました。
むしろとても良いのです。
紺の夏大島よりも、こちらの方がずっと緑が生き生きとして見えました。
赤城紬訪問着にあわせる
調子づいて、今度は赤城紬の訪問着にも合わせてみました。

赤城紬の訪問着には、茶系の三分紐を合わせました。
帯の模様に入っている茶の色と自然につながり、深緑の帯揚げが重くならず、季節の陰影として柔らかく映ります。
着物のやや赤みのある生成りの地色と深緑は補色の関係です。
普段あまり使わない色あわせなので半信半疑でしたが、試してみると互いを引き立て合って見えました。
洒落袋帯の模様にはキラッとした白が入り、これが良い“つなぎ”になっています。
深緑が重くならず、むしろ季節の陰影として美しく映りました。
宙に浮いていた帯揚げに、ようやく居場所ができた瞬間でした。
胸につかえていたものがとれるような、そんな気持ちになりました。
まとめ――帯揚げがくれたほのかな自信
せっかくショップにコーデの提案までしていただいたのですから、生かせなかったらもったいない。
一度も着用していないので、未使用品としてメルカリに出そうかと考えたこともあります。
でも良い物だからこそ思い切れず、そのまま保管していました。
気にかけているのに忘れてしまいたいような、でも忘れられないような。
だって、この帯揚げ自体はとても素敵でしっかりしたお品だったので。
処分しなくて本当に良かったです。
手放していたら、きっと後悔したと思います。
役立てられなかったことで、少し自己肯定感が下がっていたかもしれません。
帯揚げのような小物は、買ったときのコーデが叶わなくなっても、 別の着物で生きることがあるのですね。
あるいは、少し変化した自分自身が“新しい役割”を見つけ出せることも。
それを知ることができて、ほんの少しだけ、ほのかな自信のようなものが心に芽生えました。
ヤフオクで購入した帯は失敗でしたが、この帯揚げは苦手意識のあった緑の色のイメージをそっと塗り替え、新しい景色を見せてくれたのでした。
▶茶屋辻模様本塩沢100亀甲着物(楽天・中古)
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私のお買い物メモ
夏に向けて、そろそろ買い足したいものを少しだけ。
自分用の覚え書きです。
🍀すずろベルト
夏は、下着を少しでも涼しく、軽くしておきたいものですね。
このすずろベルトは、伊達締めの代わりに使えるメッシュのベルトで、 紐で結ばずに面ファスナーで留められるのが魅力。
レビューでは「奇跡」と書いている方もいて、 体に沿ってくれる感じや、暑さがこもりにくいところが、とても評判が良い理由のようです。
サイズ展開が豊富なのは嬉しいけれど、そのぶんどれを選べばいいのか少し迷ってしまう。
迷ったら大きめが良い、という声が多いみたいです。
🍀鼻緒キーパー
草履の保管に使う小物なのですが、どうぶつの形があまりにもかわいくて、気になっています。
こういう小物は人に見せるものではなく、自分だけがそっと楽しむものだから、開けたときにふっと和めるものがいいなと思っていて。
草履の箱を開けたときに、こんな動物たちが顔を出したら、 それだけで気持ちがやわらぎそうです。
ちょっとした贈り物にも良さそうですね。
🍀阿波しじら(お仕立て付き)
鼻緒キーパーを見ていたら、同じショップに阿波しじらのお仕立て付きが出ていて、とても素敵でした。
25年くらい前、阿波しじらがあまりに安くて飛びついて、 母に縫ってもらったことがあります。 青・紺・白の格子模様で、当時の私には全然似合わなくて、少し着たあとルームウェアにリメイクしてしまったのですが、 生地そのものはサラッとして軽く、触り心地がとても好きでした。
似合わなかったトラウマでそれ以来しじらには近づいていなかったけれど、今は花柄もあって、藤色系の色もあって、「これなら着こなせそう」と思える柄がいくつもあって驚きました。
洋服で言えばサッカー生地のようなシボがあり、でも固くなくて、やわらかくて。
浴衣よりこちらのほうが欲しいかもしれません。
今は浴衣でもお仕立て代が2万円することを思うと、この価格はとても良心的だと思います。
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