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たいして好きじゃない糸を編んでいて、ふと立ち止まる
ここ数日、かぎ針編みでマフラーを編んでいました。
ショートピッチのグラデーションヤーン。
白、水色、グレーがくるくると変わる、見た目はきれいな糸です。

けれど──
編んでいるうちに、どうにも心が重くなってきました。
きれいはきれいなんだよね、この糸。
でも好きってほどでもない。
そのたいして好きでもない糸で、無難なデザインのマフラーを編んでいる――
編みながらそんな言葉が湧きあがってきたその瞬間、手が止まってしまいました。
もう完成間近なのだけど……
このマフラー、みっちりと重い。
編む前に想像していたよりも、ずっと重い。
持ち歩いたら、邪魔に感じるんじゃないかしら。
しかも編み地が固くて、肌あたりもパッとしない。
チクチクはそれほどでもないけど、ごわごわと固いのです。
実はメルカリで販売することを考えていたのですが、これでは自信をもってお勧めできる商品にはなりそうもありません。
そんなのを売ろうとしている自分が、すごく嫌。
どうしても気に入らない。
いっそほどいてしまおうか?
私は結構、こういうことがあります。
冷静に考えれば、ここまできたら完成させて、とりあえず出品してしまう方が良いに決まっています。
売れたらラッキー。
糸代の元は取れます。
でも、一度嫌だなって思い始めたら心が暴走してしまう。
完成させて、売って、それで楽しい?
技術的に簡単だけど何の面白味をないものを編んで、糸代を確保する。
それだけのことに、時間を費やすメリットは?
疑問の声がわーっと沸きあがってきて。
時間ばかりが溶けていく。
技術も育たない。
残りの人生を上達のないまま、気に入らないものを編んで過ごすの?

本当に編みたいものは、別にある
思い返せば、去年買った本に、ずっと気になっている作品がありました。
というか、それが気に入ったから買った本でした。
かぎ針のモチーフをつないだボレロ。
モチーフをつなぐことではじめて見えてくる模様があって、それがすごく印象的な作品です。
▶こちらのAmazonのページ「サンプルを読む」から、作品の写真が見られます。
私が編みたいのは、作品Uのボレロです。
指定糸はパピーのトルメンタ。
作品の指定糸が高価なのでためらっていました。
1玉 1,683円なのです。
一般的なセータの必要個数は10玉を越えますから、糸代だけで2万円くらいかかりそうだなと思い、躊躇していました。
ですが、好きになれないマフラーを眺めていたら、思い切ってトライしてみてもいいんじゃないかなって。
作り方ページをあらためて確認してみたところ、必要な玉数は5玉と案外少ないに気づきました。
とういことは9千円くらいで作れることになります。
これなら、本の指定糸をつかって編む作品としては、むしろ安い方になります。
編んでみようか。
ここからは、本気モードで検討を始めます。
本では茶色を使用していますが、これは私には似合わないので違う色が欲しい。
だけど、パソコンの画面上で見た感じ、好きな色がない。
もっと白っぽくて艶のある、ふっくらした糸で華やかさを出したい。
白か白に近いグレーがいい。
ツイード糸でも素敵かもしれない。
ここまで考えて、心が決まりました。
このモチーフ編みのボレロを編もう!
好きでもない糸で漫然と編んでいても、満足できない。
だったら、好きな糸で、本当に好きな作品を編んだほうがいい。
その方が、結局は技術の向上にもつながる。
新しい技術にトライしたい気持ちも生まれる。
心が喜ぶ方向へ進むことが、今後の人生を心地よく過ごせるのではないかと。
近所の手芸店へ行ってみることにした
そうと決まったら本格的に糸さがしです。
いつもの私なら、ネットショップで指定糸をサッと買ってしまうのですが、今回はそれがどうしても好みの雰囲気じゃないので悩むところです。
そこで、近所の手芸専門店へ相談に行くのはどうかと思いつきました。
そこの店員さんは数人いらっしゃるのですが、実はちょっと苦手な方がいたりして(汗)
その人はすごく編物に詳しいし、だからこその気難しさだというのは、これまでの対話のなかでわかってはいるのです。
わかってはいるのだけど、ネットで簡単に毛糸を入手できる昨今、苦手な人のところで購入するよりも、パソコンやスマホでポチっとするのがお手軽ですよね。
だから、その手芸店では滅多にお買い物しないのですが、今回はハッキリと購入する意志があり、なおかつ糸の専門的な知識が欲しい。
こういうときこそ、実店舗が力を発揮する場面なのではないかしら。
指定糸はシルクが入っているので高価ですが、違う糸なら予算もすこし抑えられるかもしれません。
店員さんにお勧めしてもらった糸を何種類か試し編みして、「よし、これでいける」と思えたら、必要な分を買い足せばいいのです。
これが気に入りの作品に仕上げるのに一番の近道な気がしてきました。
編物は、心の声を聞く手仕事
いま編んでいるマフラーはほどくことにします。
かけた時間はもったいなかったけど。
大切なことに気づけたのだから、良しとしましょう。

メルカリで売って少しでも稼げたら……などは、しばらく考えないことにして。
編み物は自分のための贅沢な時間と割り切って、楽しむことに全力を注ごうと思います。
好きな糸で、好きな作品を編む。
そのシンプルな基本に立ち返って、これからの人生を楽しみたい。
50代ともなると、残りの時間をふと考えてしまう場面が多くなります。
無限に時間があるように感じていた若い頃は時間を浪費することをなんとも思いませんでいたが、近頃は、お金の無駄遣いよりも時間の無駄遣いの方がより痛く感じるのです。
編物ブームとか言われている現在、始めて数カ月の方がネットで作品を販売して利益を出している、なんていう記事が巷に溢れています。
私も触発されてしまったのか、妙に焦っていたのですよね。
ですが私にとっては、編物は心の栄養なのです。
編んでいれば落ち着いてくる。
なんとなく感じていた不安が薄れていく。
だから編物は、あくまでも趣味という位置づけでいいんじゃないかしら。
収益を出そうとしたら楽しめなくなってしまいそう。
自分のために編んで、編んだ作品は自分で使う。
そう決めたら、いよいよ憧れの作品に取りかかれるんだわとワクワクしてきて。
どんよりと重くのしかかっていた憑きものが落ちたよう。
心は秋の空のように晴れわたっています(笑)

編物は心の声を聞く手仕事なのだと、あらためて感じた出来事でした。
今日の一冊
記事でご紹介した本は去年の秋冬号でしたが、こちらは最新作、2026秋冬号です。
私はシリーズが大変好きで、新しい本が出版されたら必ずチェックしています。
奇をてらったものが少なく、上品なデザインが多いと個人的には感じています。
初心者でも編めるものが必ず掲載されているのも嬉しいポイントです。
今日の着物まわり
朝、スマホのメールを確認していたら、平和屋さんから新着の素敵な紬が紹介されていました。
久米島紬の「ゆうな染」
こちらです。
三越扱いの単衣です。
これからの季節にピッタリですね。
王道の深い茶色も素敵ですが、ゆうな染めには独特の色の深みがあって、優雅で現代的な雰囲気が魅力ですね。
着用したら優しい雰囲気が出るんじゃないかしら。
ゆうな染めは着物雑誌で何度か見かけたことがあり、その時から憧れの気持ちを抱いていました。
楽天市場にも何点か出品されていますので、興味のあるかたはご覧ください。
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